円形脱毛症の原因は、「円形脱毛症≒ストレス」と言わんばかりのストレス説が一般社会では言われています。
医学界では自己免疫性脱毛症と言われて、免疫異常と免疫の病気と言われています。
実際免疫異常の伴う各種のサイトカイン(炎症を起こす生体信号)が研究で確認されており、自己免疫説を支持する意見も多くあります。
ここで気が付くことです。
自己免疫性脱毛症という事は原因なのでしょうか?
僕は違うと思います。
正確には病気の仕組みを解明している状態で、原因ではありません。
ですので、過去数年間の日本皮膚科学会では、自己免疫性の炎症反応による脱毛症以上の話題は聞いたことがありません。
実際、原因としてほかの説が以下として言われています。
・「ストレス説」
・「ホルモンバランス説」
・「アトピー説」
・「出産」
これも違います。
これらは原因から生じた脱毛症に至るまでに生じた現象にしかすぎません。
では当方延べ1万人以上の患者さんの診療で得た経験からの見解です。
「円形脱毛症含めた病名問わずの脱毛症の原因は考え方も含めた不適切な生活習慣であり、そこから歪んだ行動パターンが生じて、脱毛症という歪んだ現実に至っている。」
と考えるのが最も正しい結論と現段階では考えています。
また、
「原因は1つでなくいくつもある。」
も忘れてはなりません。
ストレスの話は確かにあります。頻度としては多いです。
全身の免疫の7割は腸で出来ているというのは皮膚科の業界以外では当たり前の話になっていて、最近はコンビニでも乳酸菌入りの製品が免疫ケアといって売られている時代が来ています。
ストレスがかかると交感神経が緊張して腸内環境が悪化して免疫異常が発生すると考えることができます。
ストレスや疲労で交感神経が緊張し、その結果としてコルチゾールの産生量が増加し、バランスをとるために抗酸化ホルモンであるエストロゲンが減少、活性酸素の増加による炎症反応と前述の交感神経緊張による腸内環境悪化による免疫異常で説明がつくと考えます。
アトピー説については、腸内環境が悪いと活性酸素が増加して皮膚で炎症が起こるのは報告されています。
腸内環境が悪いと前述の自己免疫性脱毛症が発症すると考えることができます。
出産については、赤ちゃんが妊娠により母体の栄養を持っていきますので、母親は栄養障害になることがあります。栄養障害は自律神経失調症、慢性疲労、腸内環境悪化をもたらしますので、脱毛症の発症につながると考えることができます。
上記以外の原因として、
「栄養障害」( Kantor ら, 2003)、「小麦や牛乳によるIgG由来の免疫反応」、「歯科治療や食環境による金属汚染」、「感染症(梅毒)」、「甲状腺機能低下症」、「慢性疲労」、「冷え性」、「砂糖/果糖」があげられます。
甲状腺機能低下症は、鉄不足 、セレニウム不足、低体温、慢性疲労、ビタミン/ミネラル不足、水銀中毒でなりえます。
栄養障害については、鉄分、亜鉛、ビタミンDと円形脱毛症の関係は文献で述べられています。
(脱毛症治療の新戦略 P 190)
多くの病気で継続投薬治療を行わなければいけない慢性病がビタミン/ミネラル不足で治っているケースがあるように、円形脱毛症も上記報告含めて栄養障害が関係しています。
まとめると以下の図のようになります。
ストレス:ご自身の考え方のエラー
腸内環境異常・小麦/牛乳・金属汚染・甲状腺機能低下症・砂糖/果糖・妊娠による栄養障害:食生活/食環境のエラー
梅毒:主に性生活のエラー
口腔内金属による金属汚染:歯磨きのエラー
慢性疲労:睡眠環境/食生活/労務環境/対人関係のエラー
他にも色々ありますが、基本的には考え方と生活習慣がご自身の健康状態を維持する事とかみ合っていない状態です。
ですので、殆どの患者さんは脱毛症以外に何らかの症状を多く抱えています。
容易ではないですがこういう原因を片付けていく事で、
・通常治療に反応するようになる
・場合によっては無治療で治る
・副作用の心配されるような投薬治療が不要になる
・不適切な生活習慣の見直しは続くけど、適切な再発対策により、継続的な通院治療からの卒業が見込まれる
原因からの慢性ダメージで皮膚自体に浮腫が起こったり、皮膚細胞レベルで自己免疫性の炎症が確認されることがありますが、基本的には上記原因からの内臓からの病気と考えられます。
当サイト内別ページで述べていますが、東洋医学の観点で見ると典型例では肝臓と腸の病気です。
肝臓が悪くなると自律神経失調症になります。肝臓の機能低下で慢性炎症が生じます。その慢性炎症により、肝臓の解毒能力が低下したり、他の臓器への悪影響が発生します。慢性疲労や自律神経失調症により副腎が痛むと全身で炎症反応が生じます。髪の毛に限定しなければ、腎臓は活性酸素で機能障害を起こしますが、腎機能低下が著しくなると皮膚には難治のかゆみが生じます。
肝機能を根本的に改善しただけで、アトピー性皮膚炎が治っている患者さんも当院では経験しています。
腸(腸内環境)が悪くなると免疫異常と伴う慢性炎症が生じます。
自律神経、腸内環境(腸)、肝臓、副腎、胃(食欲低下による栄養障害)といった内臓のダメージからの皮膚への悪影響、これが昔から言われる「肌は内臓の鏡」の本当の意味です。
これらの内臓のメンテナンスの方向性と質を決定しているのは患者さんの考え方と行動習慣です。
こういう理由より、脱毛症を生活習慣病と当院で考えて治療しています。
ここまでの説明と上述の図を見ると円形脱毛症が治らない/何度もなるというのは、理解ができると思います。
他の医療機関で行われている保険自費問わずの治療手段
ステロイド外用/注射/点滴/内服、JAK阻害薬、凍結療法、紫外線照射、幹細胞培養上清液、PRP、再生因子、メソセラピー、ミノキシジル注射/外用/内服、セファランチン
これらは原因関係なく強制的に病状の改善を試みる対症療法という治療手段で、原因の改善とは全く関係ないことが行われています。
当院としてはこれらの治療手段が不要とは思いませんが、
・原因の影響力が強い場合は治療に反応しない(治らない)
・治ったとしても原因の影響力が強い場合は、薬漬け
・再発するかどうかは全く対処されていない
という事になります。
病状が軽い場合や何らかの慢性的な持病が元々ない場合は、頻発な再発は起こりづらいのでこれでも良いと思います。
医療機関でないセラピストでは血流障害を原因としている育毛サロンがありますが、
血流障害も病気を構成する体内異常で原因ではありません。
血流障害の原因となっている体内異常を探して治さないと、結局医療機関の対症療法と同じ位置づけになります。
鍼灸師等の治療院では原因の検査と治療を行っている事もありますが、法律的な制約により血液検査と投薬治療ができない現状より、不十分であると考えることができます。